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認知症について認知症の方の心の中と介護の向き合い方

認知症の方はなぜそんなことをするのか。
ここでは、研究者の方の書籍から認知症の方の心の中を読み解き、認知症の方との介護の向き合い方を見ていきましょう。
認知症の予防方法や、万一の認知症に備えるための制度、家族信託や任意後見もご紹介します。

  1. 認知症は早期発見では手遅れ!「超早期発見」から予防する時代へ
  2. 認知症の人の心の中はどうなっているのか?
  3. あなたの介護は大丈夫?認知症の人との向き合い方
  4. 認知症になる前に~ご自身や家族の認知症が不安な方へ~

認知症は早期発見では手遅れ!「超早期発見」から予防する時代へ

ここでは、終活カウンセラー協会のニュースレターを基に認知症について取り上げてみたいと思います。

認知症は、超高齢化社会となった日本では、誰もがご自身や身内の方の問題として直面する可能性があります。

以下のグラフは厚生労働省の令和元年度版のレポートにある参考資料です。

ご覧のとおり、認知症になる方の割合は、男女平均で
80歳から84歳で22%(5人に1人)
85歳から89歳で44.3%(5人に2人)
90歳以上で64%(5人に3人)
となっています。

特徴的なのは、85歳を過ぎると女性が認知症になる割合が男性より高く、90歳を過ぎると女性71.8%、男性42.4%と大きな差ができます。

女性は男性より平均で6年ほど長生きしますから、社会における高齢の認知症女性の割合が高まることが予想されます。

認知症の方の個性

人の個性が、元々の性格に、後から得られた知識やそれを元に育まれた理性、教養というものが合わさってできるものだとします。
そう考えた場合、知識や理性を司る部分が認知症によって衰えると個性のうち感情が占める割合が大きくなります。

認知症になったからといって何も分からなくなる訳ではなく『嬉しい、悲しい、寂しい』などの感情はあると言われています。

いずれにしても、認知症になれば自分らしく生きることが難しくなり、家族にかかる負担も大きくなります。

社会、経済に及ぼす影響も小さくありませんから、できればご自身やご家族が認知症にならないで済むようにしたいですね。

認知症の予防

認知症は根本的な治療法が未だ見つかっていないため、病気にならないことが重要です。

早期発見は大切なことですが、認知症を疑う症状が出てしまってから状態を改善するのは難しいので、超早期発見、というよりは発見する前から予防するに越したことはありませんね。

2019年5月にWHO(世界保健機構)が発行した「認知症予防ガイドライン」では、認知症の発症リスク12項目を定め、その対策を挙げています。以下、強く推奨されているものから順に並べると以下のようになっています。

【強く推奨】
運動、禁煙、バランスのとれた食事、高血圧の管理、糖尿病の管理

【条件によるが推奨】
アルコールの減量、認知トレーニング、体重管理、脂質異常の管理

【十分なエビデンスは無いが推奨】
社会活動への参加、うつ病の管理、難聴の管理

人生の終盤は、ご自身のためにもご家族のためにも終活としてこれらのことを心掛けて生きたいものです。

『認知症の人の心の中はどうなっているのか?』

次は『認知症の人の心の中はどうなっているのか?』という本の内容をご紹介します。

(Amazon.co.jpより引用)

この本は『認知症の人の心を知り、共によりよく暮らす方法を知る』ことをテーマに書かれた本です。

著者は佐藤眞一先生といって、大阪大学大学院の教授として臨床死生学、老年行動学を研究されています。
日本老年行動科学会会長なども歴任されました。

本書は、認知症の方を『上手に介護する』『うまくつきあう』ための知識ではなく同じ人間として尊重し、共に生きるために相手を知るという視点で書かれています。

介護する側ではなく、介護される側に立った見方をされているため、介護者にとってすぐに役立つノウハウを手に入れられる実用書という種類の本ではありません。

その代わり、認知症の方を深く『知る』という意味では、単なるノウハウに留まらない理解を得ることができるので、気持ちに余裕があるときに一読されるのも良いかと思います。

全5章のタイトルを見るだけでも、佐藤先生がどういう視点でこの本を著したかが分かります。

・第1章:認知症の人との『会話』を取り戻す
・第2章:認知症の人のコミュニケーションの特徴を知る
・第3章:認知症の人が見ている世界を知る
・第4章:認知症の人の苦しみを知る
・第5章:共によりよく暮らす方法を知る

どうしてそのような態度をとるのか?答えは老人のプライド

印象的なエピソードとして第4章の老女の事例をご紹介します。

Nさん(90代女性)は、(中略)ほかの入居者に対して「貧乏人のくせに」とか「学がない」などと見下したことを言うため、関係が良くありません。(中略)職員に向かって暴言を吐きます。(中略)さらに近頃は、ほかの入居者の髪の毛をつかんだり、体を引っ張ったりという、暴力行為も見られるようになってしまいました。

皆さんであれば、こうした女性の事をどう思われるでしょうか? 

最初は思いやりをもって接するにしても、職員や他の入居者を傷つけるような態度を改めなければ、次には『この人をどう扱うか』という問題に関心が移ってしまうのではないでしょうか?

介護の現場におられる実務家であれば、他の入居者の方のためにも当然そうしなければならないでしょうし、それが役割となりますが、佐藤先生は研究者であるが故に、彼女はどうしてそのような態度をとるのかに注目し、分析をされます。

そして、それが
老人のプライドと深く関わっている と指摘されています。

詳しく記載すると長くなるので、お知りになりたい方は是非本書をお読みください。

ここで解説したいのは、こうした問題行動の裏にある心理を分析することにより、同じような問題行動をとるお年寄りともより良い関係を築く方法を見つけることができるようになるかもしれまないということです。

研究者は、多くの事例から、その奥にある心の動きや真の原因を科学的なアプローチで明らかにします。
それが、実務家とはまた違った、実務と深くかかわる研究者の役割ということになるのでしょう。

研究者、介護職、家族、ジャーナリストなど多くの方々が様々な視点で高齢者や認知症についての知見を積み上げ、より良い社会を作ろうと努めておられます。

私も、未熟者ではありますが、こうした方々の背中を遥か遠くに見ながら、今、自分ができることで社会に貢献したいと考えています。

あなたの介護は大丈夫?認知症の人との向き合い方

さて、最近、私の周りでも親御さんが認知症になったという方が増えてきました。

それと同時に

『どうせ分からないのだから』

と、認知症の方が好きだったものをご家族が取り上げてしまったり

『お金の無駄だから』

などと、サークルや団体などを一方的に辞めさせてしまうという例をいくつも聞くようになってきました。

介護をされている方々の悲しみやご苦労は筆舌に尽くしがたいものがあるとは思いますが、そうした話を聞くと、私はいつもとても悲しい気持ちになります。

そうでなくとも認知症になって無力感や不安を感じている方が、自分の意思を全く尊重されることなく、一方的に好きなものを取り上げられたり、好きな仲間と引き離されてしまったらどれほど悲しい思いをされることでしょう。
そう考えてしまうのです。

認知症の方の感情は変わらない

ご家族の方はもちろんお分かりでしょうが、認知障害は感情障害ではありませんから、先述した通り、認知症になったとしても、喜び、怒り、寂しさ、悲しみ、などの感情は我々と変わりありません。

好きなもの、好きな人、嫌いなもの、嫌いな人もあり、忘れてしまうことはあっても全く分からなくなってしまうわけではありません。

お金のことも、ご本人が認知症になって管理できなくなれば、ご家族が管理をするのは当然のことですが、本人の年金や貯蓄の範囲でできることで、多少の金額であれば『無駄』と切り捨ててしまわず、ご本人の思いを汲んで差し上げるのも親孝行ではないでしょうか?

あなたの介護は大丈夫?チェック

本章の最後に、前章に取り上げた佐藤眞一先生の『認知症の人の心の中はどうなっているのか?』から≪以下の行為を、虐待と思いますか≫という一節を引用してみます。

果たして、認知症の人に対する行為で、どれが虐待にあたり、どれが虐待ではないでしょう?

ぜひ皆さんも考えてみてください。

答えはチェックの最後に載せておきます。

『認知症の人の心の中はどうなっているのか?』
(佐藤眞一著 光文社新書)

P236~P237 表5-1『以下の行為を、虐待と思いますか?』より引用

【身体的虐待】

1.ベッドに縛る
 a.家で1人にするのが心配なので、出かけるときはベッドに縛る
 b.部屋を汚すので、出かけるときはベッドに縛る

2.食べ物を口に押し込む
 a.食べるのを拒否するので、無理やり口に押し込む
 b.待っていられないので、無理やり食べ物を口に押し込む

3.振り払う
 a.イライラしているときに体に触れられると、振り払う
 b.汚れた手で体に触れられると、振り払う


【心理的虐待】

4.食卓は家族と別の場所にする
 a.食べ物を散らかすので、食卓は家族と別の場所にする
 b.会話が弾まなくなるので、食卓は家族と別の場所にする

5.話しかけられても無視する
 a.忙しいときは、話しかけられても無視する
 b.はっきりと喋らないので、話しかけられても無視する

6.失敗を大声で指摘する
 a.物忘れを繰り返すので、その度に大声でそれを指摘する
 b.耳が遠いのでよく聞こえるように、失敗を大声で指摘する


【経済的虐待】

7.高齢者の自宅を無断で売却する
 a.不要になったので、老人ホームに入居している間に高齢者の自宅を無断で売却する
 b.老人ホームへの入居費用を工面するために、高齢者の自宅を無断で売却する

8.金銭を渡さない
 a.無駄遣いをするので、金銭は渡さない
 b.無くしたり盗まれたりすると困るので、金銭は渡さない

9.高齢者の預金を無断で使う
 a.介護のために必要なお金は、高齢者の預金から無断で使う
 b.自分が必要なときには、高齢者の預金を無断で使う


【ネグレクト(放置)】

10.ゴミが散乱し、異臭がするような劣悪な住環境のなかで生活させる
 a.本人が気にしていないので、ゴミが散乱し、
  異臭がするような劣悪な住環境のなかで生活させる
 b.片付けて欲しいと頼まれたが、ゴミが散乱し、
  異臭がするような劣悪な住環境の中で生活させる

11.十分な食事、衣服を与えない
 a.生活が苦しいため、十分な食事、衣服を与えない
 b.本人がいらないというので、十分な食事、衣服を与えない

12.急を要する状態であるのに、病院に連れていかない
 a.本人が拒んだため、急を要する状態であるのに病院に連れて行かない
 b.自分も体調が悪いので、急を要する状態であるのに、病院に連れて行かない


さて、答えは?


すべて虐待です。


『認知症の人の心の中はどうなっているのか?』より

毎日、懸命に介護をされている方にとっては、やむを得ずにやっていることを虐待などと言われたらかなりショックだと思います。

しかし、認知症の研究者の間では、これらの行為は虐待として分類され、認知症の方の人権を守るための研究が進められているのも事実です。

私たち自身の将来のためにも、認知症の方を理解し、共生するための研究が進み、社会全体で共有されるようになると良いですね。

認知症になる前に~ご自身や家族の認知症が不安な方へ~

ここまで、様々な視点から認知症について見てきましたが、大事な部分をまとめるとこのようになります。

まとめ

・認知症になったからといって何も分からなくなる訳ではなく『嬉しい、悲しい、寂しい』などの感情はあると言われている。

・認知症の予防には、運動、禁煙、バランスのとれた食事、高血圧の管理、糖尿病の管理、アルコールの減量、認知トレーニング、体重管理、脂質異常の管理などが推奨されている。

・介護者の方がやむを得ずにやっていることが、虐待として分類されてしまうこともある。

前章でも申し上げたように、認知症になったからといって、その方の人権、所有物、金銭などはなくなりません。
しかし、認知症になってしまうと必要な手続き、特にお金や所有物の管理に支障をきたしてしまいます。

認知症にならないにこしたことはありませんが、ご自身や家族の認知症が不安な方は、以下のような制度を利用することで、認知症に備えることができます。

家族信託

資産をお持ちの高齢者の方が、万一、認知症で判断力が衰えたり、入院・介護で身体が不自由になると、不動産や預貯金などの財産管理や資産運用に支障をきたすようになってしまいます。

そこで、信頼できる家族の間で『家族信託』という契約書を作成しておけば、銀行、不動産会社、不動産の借主・貸主などとスムーズに交渉ができるようになります。
ご自身のためにも家族のためにもとても便利な方法なので是非ご検討ください。

【家族信託の仕組み】

家族信託の仕組み
こうすることで、ご本人(委託者)が認知症や寝たきり状態になっても、子供さんやご家族(受託者)が財産管理をし、預貯金の管理、自宅・アパートの管理、修繕や売却、建替え、相続税対策を継続をしていくことが可能になります。

【家族信託のメリット】

■権利はそのままで財産の有効活用を家族に託すことができます。
権利は移動せずに信頼できる家族に不動産や預金の一部を信託することで、財産を有効活用できます。

■成年後見制度を使わずに親の財産管理ができます。
成年後見制度は手続きが煩雑です。そこで、親が元気なうちに信頼できる家族との間で信託契約を締結することで、成年後見人をつけなくても、ご家族だけで財産管理をすることができます。

■配偶者の老後の衰えへの備えや障害のあるお子様への対策にも有効です。
ご本人様の心身が不自由になったり、万一お亡くなりになった後でも、配偶者や障害のあるお子様のために財産が使われるように信託契約を設計することで将来の不安が無くなります。

■贈与税、所得税などの税金はかかりません!
民事信託では、財産から発生する権利や利益は全て本人のものとなるので、生前贈与などと異なり贈与税、不動産取得税などの税金がかかりません。

※当センターでも承っておりますので、お気軽にご相談ください。⇒詳しくはコチラ

任意後見人制度

任意後見人制度は、判断能力が低下したときのために備えて締結できる制度です。

認知症や寝たきりになることなどに備えて、あらかじめ自分で選んだ人に、生活、療養看護、財産管理などについて代理権を与えることができます。
任意後見人は、本人が契約を結ぶことが難しくなった時に、任意後見監督人のもと、代理で契約などを行うことで、本人の希望に沿った保護・支援を行います。
法廷後見人制度とは違い、自分が信頼のおける人物を後見人に指定できるのが特徴です。

締結をする場合は、判断能力があるうちに行う必要があります。
信頼できる人に相談をして、後見人になってもらいましょう。
※当センターでも承っておりますので、お気軽にご相談ください。⇒詳しくはコチラ

【任意後見の仕組み】
任意後見の仕組み

【任意後見人が代理で行うこと】

・入院手続き、医療費の支払い
・生活費の送金
・要介護認定の申請
・介護サービスの契約
・施設入所手続き
・介護費用の支払い
・自宅等の不動産の管理
・預貯金、有価証券の管理
・年金の管理
・税金や公共料金の支払い
・社会保障関係の手続き
・賃貸借契約など

最後に

高齢化が進む日本では、長生きをすればするほど、誰もが認知症になる可能性があります。

認知症研究の第一人者である長谷川和夫先生でさえも、ご自身が認知症を発症され
『ボクはやっと認知症のことがわかった』
という本を著しておられるくらいです。

(Amazon.co.jpより引用)

人生は、認知症になったからといってそこで終わってしまうわけではありません。

周囲の理解さえあれば、認知症になってからでも、人生を閉じるまで、ずっと幸せに生きていくことができます。

親御さんや、周囲の方で認知症になった方がいたら、その方の意思をできるだけ尊重して共に支え合って生きていくよう一緒に努力していきませんか?

それが、自分たちが認知症になった時に幸せに生きていける社会を作る第一歩になると信じています。

※本日ご紹介した家族信託や任意後見については、当センターでも承っておりますので、是非お気軽にご相談ください。
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